ミレーナとは、黄体ホルモンの一種であるレボノルゲストレルを子宮内に持続的に放出するIUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)です。避妊を目的とするだけでなく、過多月経や月経困難症の治療にも使用される医療機器で、国内では2007年に販売が始まりました。
一度装着すると最長5年間使用でき、毎日薬を飲む必要がないことが特徴です。一方、装着直後の不正出血や月経周期の変化、挿入時の痛み、副作用、保険適用の条件など、事前に理解しておきたい点もあります。2026年11月時点のPMDA(医薬品医療機器総合機構)の医薬品情報、バイエル薬品の資料、日本産婦人科医会の解説をもとに、効果から費用、注意点まで整理します。
【基本知識】ミレーナとは?IUSとミレーナ52mgの違いを解説

ミレーナは子宮内に装着するホルモン放出システム
ミレーナは、英語でMirenaと表記される子宮内システムです。IUSは「Intrauterine System」の略称で、日本語では子宮内システムと呼ばれます。
見た目は小さなT字型の器具で、産婦人科医が専用の器具を使って子宮内に装着します。本体には黄体ホルモンであるレボノルゲストレルが含まれており、子宮内で少しずつ放出される仕組みです。
日本で使用されている製品名はミレーナ52mgです。52mgという数字は、システム1個に含まれるレボノルゲストレルの総量を示しています。1日当たり52mgが放出されるという意味ではありません。
ミレーナは医師の診察と処置が必要な処方箋医薬品です。自分で購入して装着するものではなく、装着前の検査や装着後の定期的な診察も必要です。
IUSとIUDは何が違う?
ミレーナを理解するうえで混同しやすいのが、IUSとIUDの違いです。
どちらも子宮内に装着する器具ですが、一般的な銅付加IUDは銅の作用を利用して避妊するのに対し、ミレーナは黄体ホルモンを放出することで避妊と月経症状の改善を目指します。
特にミレーナは、避妊だけでなく月経血量を減らす作用を持つ点が特徴です。そのため、月経の量が多くて日常生活に支障が出ている人や、月経痛に悩んでいる人にも治療の選択肢として検討されています。
【効果と仕組み】ミレーナはなぜ避妊や過多月経に効くのか
レボノルゲストレルが子宮内膜に局所的に作用する
ミレーナの中心的な働きを担うのが、合成黄体ホルモンのレボノルゲストレルです。
装着すると、薬剤が子宮内に持続的に放出され、子宮内膜に高濃度の黄体ホルモンが作用します。これによって子宮内膜が薄くなり、月経血量が減少します。
また、子宮頸管粘液の粘度を高めることで精子が子宮内に入りにくくなり、子宮内膜への作用などと合わせて避妊効果を発揮します。一部の女性では排卵が抑制されることもあります。
重要なのは、ミレーナの作用が主に子宮内で起こるという点です。通常は排卵周期が維持されるため、装着したからといって必ず排卵が止まるわけではありません。
ミレーナの主な3つの効果
1. 避妊効果
ミレーナは長期間にわたって避妊効果を維持できる方法です。海外臨床試験では、2,245例を対象とした試験で、5年目までの累積妊娠率は0.71%と報告されています。
国内第III相試験では、避妊を希望する経産婦482例のうち、1年目までに妊娠した人は2例でした。
ただし、避妊率が100%というわけではありません。また、ミレーナはHIVやクラミジア、淋菌などの性感染症を防ぐものではありません。性感染症の予防にはコンドームが必要です。
2. 過多月経の改善
過多月経とは、月経血量が異常に多く、日常生活に支障が出たり、貧血につながったりする状態です。
ミレーナは子宮内膜を薄くすることで、月経血量を減少させます。海外臨床試験では、装着前と比較した月経血量の減少量の中央値が128.8mLとなり、比較対象の経口薬群の17.8mLを上回りました。
また、月経血量が80mL未満になり、装着前から50%以上減少したという有効性の基準を満たした割合は84.8%でした。
過多月経による貧血や生活上の負担を軽減する治療方法として、検討する価値があります。ただし、子宮筋腫など器質的な原因がある場合には、原因となる疾患の治療を優先する必要があります。
3. 月経困難症の改善
月経困難症は、月経に伴って強い下腹部痛や腰痛などが起こり、仕事や学校、日常生活に影響する状態です。
ミレーナは子宮内膜を薄くして月経血量を減らすとともに、月経に伴う症状の軽減を目指します。
子宮内膜症や子宮腺筋症などを背景とした月経痛についても、病状や子宮の状態を確認したうえで治療の選択肢となります。ただし、すべての原因による月経痛に同じ効果が期待できるわけではありません。
ミレーナに関係する主要な医療用語と作用の関係
| 要素・エンティティ | ミレーナとの関係 | 知っておきたいポイント |
|---|---|---|
| ミレーナ52mg | 医療機器の製品名 | 1個にレボノルゲストレル52mgを含有する |
| レボノルゲストレル | 有効成分 | 黄体ホルモンとして子宮内で持続的に作用する |
| IUS | 医療機器の分類 | 子宮内に装着してホルモンを放出するシステム |
| 子宮内膜 | 主な作用部位 | 内膜が薄くなり月経血量が減少する |
| 子宮頸管粘液 | 避妊に関係する部位 | 粘液の粘度が高まり精子が通過しにくくなる |
| 排卵・卵巣機能 | 全身への影響との関係 | 通常は排卵が維持されるが、一部では抑制される |
| 過多月経・月経困難症 | 治療対象となる症状 | 月経血量や月経痛の軽減を目指す |
この関係を理解すると、ミレーナが単なる避妊リングではなく、避妊と月経に関する症状の改善という複数の役割を持つ医療システムであることが分かります。
【装着後の生理と副作用】不正出血や生理が止まる現象は大丈夫?
装着後は不正出血が起こりやすい
ミレーナを装着した後、多くの人が気になるのが出血の変化です。
装着後数カ月間は、月経と月経の間に少量の出血が続いたり、月経期間が長くなったり、出血のタイミングが不規則になったりすることがあります。
これは子宮内膜が変化していく過程で見られる現象です。PMDAの添付文書でも、装着後数カ月間は月経中間期出血が起こることが多く、通常は装着を継続するうちに消失すると説明されています。
ただし、装着後数カ月を過ぎても出血が続く場合や、いったん落ち着いた出血が再び増えた場合には、別の原因が隠れている可能性もあります。自己判断で放置せず、産婦人科を受診してください。
ミレーナ装着後の生理はどう変わる?
ミレーナを装着すると、月経血量が少なくなり、月経期間が短くなる傾向があります。
さらに使用を続けると、月経が非常に少なくなったり、完全に止まったりする人もいます。PMDAの添付文書では、使用中に約20%の女性に無月経がみられるとされています。
ここで注意したいのは、生理が止まることと排卵が止まることは同じではないという点です。
ミレーナは子宮内膜に強く作用する一方、通常は卵巣の排卵機能が維持されます。したがって、月経がなくなったからといって、更年期に入った、あるいは卵巣機能が停止したと判断することはできません。
また、無月経になった場合でも妊娠の可能性が完全になくなるわけではありません。妊娠を疑う症状がある場合は検査を受ける必要があります。
代表的な副作用と発現頻度
バイエル薬品の医薬品資料に記載された国内第III相臨床試験では、482例中428例に何らかの副作用が認められました。
- 月経異常:78.6%(過長月経、月経周期異常など)
- 卵巣のう胞:12.7%
- 月経中間期出血:10.0%
- 腹痛:7.9%
- 装着時の疼痛・出血:報告された副作用の一つ
これらは承認時の臨床試験における数値であり、現在のすべての使用者にそのまま当てはまるものではありません。また、月経異常の割合が高いことは、装着後の出血パターンが変化しやすいことを反映しています。
そのほか、頭痛、吐き気、乳房の痛み、気分の変化、にきび、体重増加などが報告されています。症状の現れ方には個人差があります。
見逃してはいけない重大な副作用
発生頻度は高くありませんが、特に注意が必要な副作用もあります。
- 骨盤内炎症性疾患:発熱、下腹部痛、異常なおりものなどが現れることがある。
- 子宮穿孔:装着時などに子宮壁を傷つけることがある。
- 異所性妊娠:ミレーナ装着中に妊娠した場合には、子宮外妊娠の可能性を考慮する必要がある。
- 卵巣のう胞破裂:持続する腹痛や急激な下腹部痛などに注意する。
特に、発熱を伴う下腹部痛、急激に強くなる腹痛、多量の出血、妊娠を疑う症状がある場合は、早急に医療機関へ相談してください。
なお、ミレーナ装着中に妊娠した場合、その妊娠の約半数が異所性妊娠であったと添付文書に記載されています。これは装着者全体の半数が子宮外妊娠になるという意味ではありません。妊娠そのものがまれである一方、妊娠が判明した場合には迅速な診断が必要という意味です。
【挿入方法と使用期間】痛みはある?ミレーナは何年使える?
ミレーナの挿入は産婦人科医が行う
ミレーナの装着は、産婦人科で行われる医療処置です。
一般的には、問診や内診、超音波検査などによって子宮の状態を確認し、妊娠や感染症の有無などを調べます。その後、子宮頸管や子宮腔の状態を確認し、専用の挿入器具を使用して子宮内に装着します。
装着時には、器具を子宮頸管から子宮内へ通すため、痛みや出血が起こる場合があります。
ミレーナの挿入はどのくらい痛い?
痛みの程度には個人差があります。月経痛に似た下腹部痛や、子宮頸管を通過するときの痛みを感じる人もいます。
特に子宮頸管が狭い場合や、子宮腔の長さ・形状によっては挿入が難しくなることがあります。出産経験の有無だけで痛みを決めつけることはできません。
痛みへの不安が強い場合は、事前に医師へ相談してください。医療機関によっては局所麻酔などの対応を検討できる場合があります。
装着後数日間は、軽い出血、下腹部痛、腰痛、おりものの変化などが起こることもあります。症状が強い場合や長く続く場合は診察が必要です。
装着期間は最長5年間
ミレーナの大きな特徴は、一度装着すると長期間使用できることです。
日本の添付文書では、装着後5年を超えないうちに除去または交換することと定められています。
レボノルゲストレルの放出量は一定ではなく、装着直後は1日20μg、1年後には18μg、5年後には10μg程度へと徐々に減少します。
5年が近づいたら、避妊や治療を継続する必要があるか医師と相談し、交換または除去の計画を立てます。自己判断で使用期間を延長することは避けてください。
装着後の定期検診も必要
長期間装着できるからといって、5年間まったく受診しなくてよいわけではありません。
PMDAの添付文書では、装着後3カ月以内、1年後(必要に応じてそれ以前)、その後は少なくとも年1回の診察が推奨されています。
超音波検査などでミレーナの位置を確認し、脱出や位置異常、子宮の状態などを確認することが大切です。出血や痛みが続く場合には、定期検診を待たずに受診してください。
【保険適用と費用】ミレーナは保険診療と自費診療でいくら違う?
過多月経・月経困難症なら保険適用の可能性がある
ミレーナは日本で、避妊だけでなく過多月経と月経困難症の治療にも承認されています。
保険適用の経緯を見ると、2007年4月に国内販売が開始され、その後、2014年6月に過多月経、同年11月に月経困難症の効能が追加されました。
現在は、医師が過多月経や月経困難症と診断し、治療として適切と判断した場合に、健康保険を利用して装着できる可能性があります。
一方、避妊だけを目的として装着する場合は保険適用外です。全額自己負担の自費診療となります。
ここで注意したいのは、月経血量を減らしたいという希望だけで、必ず保険適用になるわけではないことです。症状や検査結果、診断、治療上の必要性などを踏まえて医師が判断します。
保険適用と自費診療の費用比較
実際の費用は、診察料、超音波検査、感染症検査、装着処置、麻酔、装着後の検査などによって異なります。
医療機関が公開している料金例では、次のような違いがあります。
- 保険診療:ある医療機関では、装着のみの自己負担額の目安を約11,000〜15,000円と案内している。
- 自費診療:医療機関の公開料金には48,000円、55,000円、66,000円、70,000円などの例がある。
- 追加費用:初診料、検査料、麻酔料、定期検診料、抜去費用などが別途必要になる場合がある。
これらは全国一律の料金ではなく、各医療機関の公開料金に基づく参考例です。特に自費診療では、何が料金に含まれるかによって総額が変わります。
費用を比較するときの注意点
単純に装着料金だけを比較するのではなく、初診・検査・装着後の確認・5年後の抜去や交換まで含めた総額を確認することが大切です。
また、保険診療と自費診療では費用の仕組みが異なります。保険適用の治療を希望する場合は、初診時に症状を具体的に伝え、保険診療として対応できるか確認してください。
【メリット・デメリット】ミレーナが向いている人と慎重に検討したい人
ミレーナの主なメリット
- 長期間使用できる:一度の装着で最長5年間使用できる。
- 避妊効果が高い:海外臨床試験では5年間の累積妊娠率0.71%という結果が報告されている。
- 月経血量を減らせる:過多月経による負担や貧血の改善が期待できる。
- 月経痛の軽減が期待できる:月経困難症の治療選択肢になる。
- 毎日の服薬が不要:ピルのように毎日決まった時間に服用する必要がない。
- 局所的に作用する:主な作用部位が子宮内膜であり、通常は排卵周期が維持される。
知っておきたいデメリット
- 挿入時に痛みがある:子宮頸管を通す処置のため、痛みや出血を伴うことがある。
- 初期の不正出血:装着後数カ月間は出血パターンが不規則になりやすい。
- 副作用の可能性:腹痛、頭痛、卵巣のう胞などが報告されている。
- 定期検診が必要:装着位置や子宮の状態を確認する必要がある。
- 自然脱出や位置異常:器具がずれたり脱出したりすると効果が低下する可能性がある。
- 性感染症は予防できない:コンドームの代わりにはならない。
ミレーナが向いている人
ミレーナは、次のような悩みや希望がある人にとって、有力な選択肢となります。
- 月経血量が多く、日常生活に支障が出ている人
- 月経痛が強く、治療方法を見直したい人
- 長期間にわたって避妊したい人
- 毎日ピルを服用することが難しい人
- 避妊と月経症状の改善を同時に検討したい人
慎重に検討したい人
一方、妊娠中または妊娠の可能性がある人、原因が確定していない異常性器出血がある人、性器がんやその疑いがある人、子宮の形態に異常がある人、活動性の骨盤内感染症がある人などは、添付文書上の禁忌に該当する場合があります。
また、授乳中の人、肝機能に問題がある人、出産経験がない人などは、個別の状況に応じた慎重な判断が必要です。
出産経験がないことだけで一律に装着できないわけではありません。ただし、避妊目的で使用する未経産婦については、添付文書で第一選択の避妊法としないよう注意が示されています。
【プロの結論】ミレーナは「避妊器具」だけでなく月経治療の選択肢
ミレーナを検討するときに大切なのは、避妊効果だけで評価しないことです。
過多月経や月経困難症によって生活の質が低下している人にとって、月経血量を減らし、長期間にわたって作用するという特徴は大きなメリットになります。
一方で、装着直後の不正出血や定期検診の必要性、子宮の状態による適応の違いなど、導入前に確認すべき点もあります。
特に重要なのは、「避妊したいのか」「月経症状を治療したいのか」「両方を希望するのか」という目的を明確にすることです。目的によって保険適用の可否や治療方針が変わるためです。
医師と相談するときは、月経量、痛みの程度、貧血の有無、妊娠希望、過去の婦人科疾患などを伝えると、より適切な判断につながります。
【ミレーナとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ミレーナを装着すると生理は完全に止まりますか?
A1:必ず止まるわけではありません。月経血量が減少し、月経が非常に少なくなる人もいます。PMDAの添付文書では、使用中の約20%に無月経が認められるとされています。月経が止まっても排卵が続いている場合があります。
Q2:ミレーナの避妊効果はどのくらい続きますか?
A2:日本の添付文書では、装着後5年を超えないうちに除去または交換することとされています。5年間の使用を希望する場合も、定期検診を受けて器具の位置を確認する必要があります。
Q3:ミレーナは避妊目的でも保険適用になりますか?
A3:避妊のみを目的とする場合は保険適用外です。過多月経や月経困難症の治療目的で、医師が適応を判断した場合には保険診療となる可能性があります。
Q4:ミレーナの挿入は痛いですか?
A4:痛みには個人差があります。装着時に下腹部痛や出血が起こる場合があります。痛みが心配な場合は、事前に麻酔などの対応について医師に相談してください。
Q5:ミレーナを装着すると太りますか?
A5:体重増加は副作用として報告されていますが、装着した人全員に起こるわけではありません。体重変化には生活習慣や体質など複数の要因が関係するため、気になる変化が続く場合は医師に相談してください。
Q6:ミレーナを装着すると妊娠できなくなりますか?
A6:ミレーナは永久的な避妊手術ではありません。医師によって除去することができ、将来の妊娠を希望する場合には除去について相談できます。ただし、妊娠を希望する時期や個々の健康状態については医師の判断が必要です。
Q7:出産経験がなくてもミレーナを装着できますか?
A7:出産経験がないことだけで装着が一律に禁止されているわけではありません。ただし、子宮頸管や子宮腔の状態、挿入の難しさなどを確認する必要があります。特に避妊目的の場合は、他の避妊方法も含めて医師と相談してください。
まとめ:ミレーナの効果・費用・副作用を理解して自分に合う選択を
ミレーナとは、レボノルゲストレルを子宮内に持続的に放出するIUSであり、避妊、過多月経、月経困難症という3つの目的で使用される医療システムです。
最長5年間装着でき、毎日の服薬が不要であることに加え、月経血量や月経痛の軽減が期待できる点が大きな特徴です。
一方、装着直後の不正出血、腹痛などの副作用、挿入時の痛み、自然脱出や位置異常といったリスクも理解しておく必要があります。
保険適用については、過多月経や月経困難症の治療目的であれば対象となる可能性がありますが、避妊のみを目的とする場合は自費診療です。実際の負担額は医療機関や検査内容によって異なります。
ミレーナが自分に合うかどうかは、月経症状、避妊の希望、子宮の状態、将来の妊娠計画などによって変わります。婦人科で十分な説明を受け、メリットとデメリットの両方を理解したうえで、自分の身体と生活に合った方法を選ぶことが大切です。