2026年11月3日現在、岐阜大学医学部附属病院をめぐる重要な動きは、医療安全上の事案と診療機能の強化という2つの側面に分けられる。
病院の公式発表や報道から確認できる主な動向は次のとおりだ。
- 2026年4月: 清水雅仁氏が新病院長に就任。任期は2028年3月31日まで。
- 2026年6月23日: モニター・アラームへの対応が不適切だった医療事故について、調査結果と再発防止策を公表。
- 2026年7月: 産婦人科医が16人から24人に増加した取り組みが報道される。
- 2026年8月: 熊本県にDMATを派遣し、現地での活動を終えて帰院。
- 2026年9月: 3人の医師がDoctor of Doctors Network 2026-2028に選出。
- 2026年10月: 脳卒中や骨粗しょう症などに関する情報発信、市民向け医療啓発を継続。
特に注目されるのは、6月に公表された医療事故だ。一方で、PSMAを標的とする核医学治療の導入や救急医療体制の強化など、診療面でも新しい動きが進んでいる。
【病院の基本情報】岐阜大学医学部附属病院とは?歴史と役割

岐阜大学病院の正式名称は「岐阜大学医学部附属病院」。岐阜県岐阜市柳戸1番1に位置し、東海地方の医療を支える大学病院の一つだ。
その歴史は古く、1875年(明治8年)に岐阜県公立病院として設立された。2004年6月1日には岐阜市司町から現在の柳戸地区に移転し、病院機能を拡充してきた。
2026年の病院概要や公表資料で確認できる施設の特徴は以下のとおり。
- 所在地:岐阜県岐阜市柳戸1番1
- 許可病床数:614床
- 一般病床:577床
- 精神病床:37床
- 開院日:2004年6月1日
- 電話番号:058-230-6000
岐阜県内唯一の大学病院であり、唯一の特定機能病院として、高度な医療技術を必要とする患者や、一般の医療機関では対応が難しい症例を受け入れている。
主な診療科と専門医療センター
診療科は内科系、外科系、小児科、産婦人科、精神科、放射線科など幅広い。
専門的な診療機能として、次のようなセンターも設置されている。
- がんセンター
- 岐阜県脳卒中・心臓病等総合支援センター
- ロボット支援手術センター
- 肥満症治療センター
- 高次救命治療センター
- 周産期・生殖医療センター
単独の診療科だけでは対応が難しい病気に対し、複数の専門職が連携して治療にあたる仕組みが特徴だ。
【2026年の注目人物】新病院長・清水雅仁氏の就任と今後の方針
2026年4月1日、岐阜大学医学部附属病院の第36代病院長に清水雅仁氏が就任した。
専門は消化器内科学。これまで教授として診療・研究に携わり、副病院長として病院運営や医療安全にも関わってきた人物だ。
前任の秋山治彦氏の任期満了に伴う交代であり、病院長の任期は2028年3月31日までとなっている。
清水病院長が掲げる2030年に向けたビジョン
2026年6月30日発行の広報誌「うぶね」Vol.62では、新病院長へのインタビューが掲載された。
そこで示された方向性は、大きく4つに整理できる。
1. 専門医療センターの強化
がん、脳卒中、心臓病、ロボット支援手術など、専門領域を横断する診療体制を強化する方針だ。
新設された肥満症治療センターも順次稼働している。
2. 救急医療の受け入れ体制の強化
救急患者の受け入れ態勢や、集中治療室(ICU)、高次救命治療センターの病床数などについて、現在の医療ニーズに合わせた整備を進めるとしている。
3. AI・ICTによる医療DX
電子カルテの活用に加え、AIによる検査管理、オンライン診療、遠隔ICU構想などを進める方針が示された。
4. 地域医療との連携
高度な治療を大学病院で行った後、患者が地域の医療機関に円滑に移行できる体制を整えることも課題に挙げられている。
注目したいのは、先進医療の導入だけでなく、患者が治療後に日常生活へ戻るまでを見据えた病院運営を目指している点だ。
【医療事故の経緯】2026年6月に公表されたアラーム対応問題の詳細
2026年に岐阜大学病院が公表したニュースの中で、最も大きな関心を集めたのが、入院患者が死亡した医療事故だ。
これは単なる機器の故障ではない。医療機器の警告を認識した後の対応、端末の管理、スタッフ間の情報共有など、複数の問題が重なった事案だった。
事故はどのように発生したのか
報道によると、事故は2025年7月に発生した。
患者は意識障害があり、誤嚥を防ぐための手術を受けて入院していた。術後の経過は良好で、退院日も決まっていた。
しかし、退院予定日の4日前、病棟内で心肺停止状態となっているところを発見された。
院内救急コールと心肺蘇生が実施されたものの、心拍は再開せず、患者は亡くなった。
岐阜大学医学部附属病院は2026年6月23日、遺族の了承を得たうえで、外部専門家を主体とする医療事故調査委員会の調査結果を公表した。
調査で明らかになった問題点
調査報告書によると、患者のモニター・アラームに対する対応には複数の問題があった。
特に重要なのが、アラームを消音した後、速やかに患者のもとへ訪問して状態を確認していなかったことだ。
加えて、夜勤帯に使用する携帯端末3台のうち、1台がログオフ状態、もう1台が充電中となっており、実質的に1台だけで運用されていた。
また、センサーの外れなどによる機器側の警告が頻繁に発生していたことで、異常を知らせる本来のアラームへの反応が遅れた可能性も指摘された。
調査委員会が示した主な問題は以下のとおり。
- アラームを消音した後の訪室が行われなかった。
- 頻繁なテクニカルアラームによって警告への慣れが生じていた可能性がある。
- 携帯端末のログイン状況やアラームの発生状況が十分に共有されていなかった。
- 携帯端末の所持・充電管理が適切に行われていなかった。
- 定められた充電ルールやログイン方法の周知が徹底されていなかった。
調査では、手術や術後管理、看護ケアそのものは標準的な医療の範囲内だったと評価されている。
一方、モニタリングとアラームへの対応、通知システムの運用には標準からの逸脱が認められた。
死因については、喀痰の貯留による気道閉塞をきっかけに低酸素状態となり、急性呼吸不全から循環不全に進んだ可能性が高いと判断された。
病院が発表した再発防止策
病院は調査結果を受け、再発防止策を公表している。
主な対策は次の3分野だ。
- アラーム管理の改善: 不要な警告を減らし、患者の状態に応じたアラーム設定を行う。
- 携帯端末の管理強化: 常時所持とログイン状態の維持を義務付け、夜勤帯の運用状況も確認する。
- 情報共有の徹底: 勤務開始時に監視対象患者やアラーム設定を共有し、医師・看護師間の連携を強化する。
加えて、Monitor Alarm Control Team(MACT)を設置し、アラームの発生件数、対応時間、機器由来の警告の割合などを継続的に分析する方針も示された。
単に職員に注意を促すのではなく、警告の仕組みと組織の運用を同時に改善する必要があるということだ。
【時系列・関係性まとめ】過去の医療安全事案と2026年の動向
岐阜大学病院の医療安全を考えるうえでは、2026年の事故だけでなく、過去の公表事例との関係も見逃せない。
| 時期 | 出来事・関係者 | 確認できる内容 |
|---|---|---|
| 2018年10月 | 生体情報モニターの事故 | アラームを覚知できず、心肺蘇生が遅れて患者が死亡 |
| 2019年3月 | 病院の再発防止策 | 携帯型モニター・アラーム通知システムを導入 |
| 2024年1月 | 画像診断の対応遅延事案の患者が死亡 | 2019年12月のCT検査で指摘された所見への対応が約3年間行われなかった |
| 2025年4月21日 | 画像診断事案を公表 | 外部専門家による調査結果と改善策を公表 |
| 2025年7月 | モニター・アラーム事案 | 入院患者が心肺停止状態で発見され死亡 |
| 2026年4月1日 | 清水雅仁氏 | 新病院長に就任 |
| 2026年6月23日 | モニター・アラーム事案を公表 | 調査結果と再発防止策を発表 |
| 2026年8月 | DMAT | 熊本県へ派遣され、8月9日に帰院 |
| 2026年9月28日 | 医師3人 | Doctor of Doctors Networkに選出 |
この年表から読み取れるのは、医療事故の公表と再発防止策の実施が、病院の継続的な課題になっていることだ。
特に2018年のアラーム対応事案を受けて通知システムを導入したにもかかわらず、2025年の事故で再び運用上の問題が生じた点は重い。
システムを導入したという事実だけでは、安全が保証されないことを示している。
【診療実績と最新医療】岐阜大学病院の強みはどこにある?
医療事故に関する報道だけで病院全体を評価するのも適切ではない。
岐阜大学医学部附属病院は、難しい症例を扱う高度医療機関として、専門的な診療や研究にも取り組んでいる。
公開されている診療実績
病院が公表している2024年度の機能指標では、手術室内での手術件数は6,426件だった。
また、2024年度の患者統計では、外来患者数は延べ320,725人、1日平均1,319.86人となっている。
これらの数字からも、県内の多くの患者を受け入れる大規模な医療機関であることが分かる。
2026年1月に始まったPSMA核医学治療
新しい医療技術として注目されるのが、前立腺がんを対象とするPSMAを標的とした核医学治療だ。
清水病院長の2026年6月のインタビューによると、同治療は2026年1月に岐阜県内初の実施施設として運用が始まった。
PSMAは前立腺がん細胞に多く発現する標的分子で、これを利用した治療は、がん細胞を狙った核医学治療の一つとして位置付けられている。
高度な治療を県内で受けられる選択肢が増えたことは、患者にとって重要な変化だ。
産婦人科医が16人から24人に増加
2026年7月15日、中日新聞は岐阜大学病院の産婦人科における人材育成改革を取り上げた。
大学医学部の公式発表によると、同科の医師数はこの3年間で16人から24人へ増加した。
2023年以降の臨床実習の見直しや教育体制の充実が、新規入局者の増加や離職者の減少につながったと紹介されている。
医師不足が課題となる地方医療において、教育と人材確保を結び付けた取り組みとして注目できる。
医師同士の評価による専門医の選出
2026年7月21日には、複数の医師がBest Doctors in Japan 2026-2027に選出された。
さらに9月28日には、以下の3人がDoctor of Doctors Network 2026-2028に選ばれた。
- 呼吸器内科:津端由佳里教授
- 産婦人科:磯部真倫教授
- 脳神経外科:出雲剛教授
いずれも医師同士の評価や所定の推薦・選考基準に基づく認定だ。
ただし、こうした認定は個々の医師の専門性に関する評価であり、病院全体の医療安全を保証するものではない。両者を区別して見る必要がある。
【ネットの反応・炎上・噂の真相】何が問題視されている?
2026年6月の医療事故公表後、インターネット上では厳しい意見が見られた。
Yahoo!リアルタイム検索などで確認できる投稿には、患者や遺族への同情、病院の責任を問う声、再発防止策の実効性を疑問視する意見などがある。
一方、医療現場の人員配置や業務負担、頻繁なアラームによる警告疲れに注目する投稿も確認できる。
大きく分けると、次の3つの論点だ。
① 病院の安全管理に対する批判
警告音が鳴ったにもかかわらず、患者の状態確認が行われなかったことに対して、医療機関としての責任を問う意見が見られる。
② 現場の人員配置と業務負担への懸念
多くの患者を担当する夜勤帯の業務負担や、複数の業務を同時に処理する体制に問題がなかったのかという論点だ。
③ 再発防止策の実効性への疑問
2018年にもアラーム関連の死亡事案が発生し、その後に通知システムを導入したにもかかわらず、同様の問題が再び起きたことへの懸念である。
これらは一部の投稿に見られる意見であり、ネット利用者全体の意見を示す統計ではない。
噂の真相①「手術そのものに問題があった?」
調査報告書では、誤嚥防止手術の選択や手術の実施、術後管理、看護ケアは標準的な医療の範囲内だったと判断されている。
問題として認められたのは、主にモニターの監視とアラーム通知システムの運用だ。
したがって、手術そのものに重大な問題があったという説明は、調査結果とは一致しない。
噂の真相②「2018年の事故と同じ問題が再発した?」
これは重要な事実を含んでいる。
2018年にも生体情報モニターのアラームを覚知できず、心肺蘇生が遅れて患者が死亡した事案があった。
その後、2019年3月に携帯型通知システムが導入された。
しかし、2026年に公表された調査では、通知システムが適切に運用されていなかったことが明らかになった。
単純に同じ事故が繰り返されたというよりも、過去の教訓を仕組みとして定着させることに課題が残っていたと捉えるべきだ。
噂の真相③「岐阜大学病院全体が診療できない状態なのか?」
医療事故の公表は重大だが、それだけで病院全体の診療機能が停止していると判断することはできない。
2026年10月にも、病院は脳卒中や骨粗しょう症に関する医療情報の発信を続けている。
DMATの活動や専門医療の強化も公表されている。
医療安全上の問題と、病院が提供する診療機能は分けて考える必要がある。
【プロの結論】本当に評価すべきなのは再発防止の実行力
今回の問題から見えてくるのは、医療機器の導入だけでは安全性を確保できないということだ。
アラームを発生させる仕組み、通知を受ける端末、実際に患者のもとへ向かう職員、異常を共有する組織。この一連の流れが正常に機能して初めて、医療安全は成立する。
今後、岐阜大学病院を評価する際には、再発防止策を発表したかどうかだけでなく、アラームへの対応時間や端末の運用状況、職員教育、第三者による検証などが継続的に実施されているかが重要な判断材料になる。
【受診ガイド】岐阜大学病院の診療時間・予約・アクセス
実際に受診を考えている人に向けて、基本的な情報も整理しておきたい。
初診の受付時間
- 初診受付:平日8時30分~11時
- 休診日:土曜日・日曜日・祝日
- 年末年始:12月29日~1月3日
- 代表電話:058-230-6000
- 予約センター:050-1725-3817
- 予約センター対応時間:平日9時~15時
予約センターはAI専用ダイヤルとなっている。
診療科によって受診条件や予約方法が異なるため、来院前に診療日・外来担当表を確認しておくとよい。
初診で気を付けたいこと
大学病院は高度な専門医療を担う施設であるため、まず地域のかかりつけ医に相談し、必要に応じて紹介状を用意してもらう方法が基本となる。
特に専門的な検査や治療が必要な場合は、事前に紹介元の医療機関と受診先の診療科を調整しておくとスムーズだ。
岐阜大学病院はどのような人に向いている?
受診先を選ぶ際は、病気の種類や治療段階によって判断したい。
受診を検討するケース
- 専門性の高い診断や治療が必要な場合
- がんや難病など、複数の専門領域が関係する場合
- 高度な手術や先進的な治療について相談したい場合
- 地域の医療機関から大学病院での診療を勧められた場合
まず地域の医療機関に相談したいケース
- 日常的な体調不良や一般的な症状の相談
- 継続的な健康管理や慢性疾患の定期診察
- 大学病院での専門治療が必要か判断できない場合
大学病院への受診は、必ずしも最初の選択肢である必要はない。地域の医療機関と役割を分担することで、必要な医療につながりやすくなる。
【よくある質問】岐阜大学病院に関するFAQ
Q1:2026年現在の岐阜大学病院の病院長は誰ですか?
清水雅仁氏です。2026年4月1日に第36代病院長に就任しました。任期は2028年3月31日までです。
Q2:2026年に岐阜大学病院で何があったのですか?
2026年6月23日、入院患者が死亡したモニター・アラーム対応事案について、病院が外部専門家を主体とする調査委員会の報告概要と再発防止策を公表しました。
Q3:岐阜大学病院は医療事故の後も通常診療を行っていますか?
2026年11月3日時点で、病院公式サイトでは診療案内や外来担当表、医療情報などが公開されています。個別の診療科の受付状況については、受診前に直接確認してください。
Q4:岐阜大学病院の病床数はいくつですか?
公表されている病院概要では614床です。内訳は一般病床577床、精神病床37床です。
Q5:岐阜大学病院で先進的ながん治療を受けられますか?
がんセンターやがんゲノム医療連携の体制があり、2026年1月には県内初となるPSMAを標的とした核医学治療の運用も始まりました。適応条件や実施状況は、担当診療科への確認が必要です。
まとめ:岐阜大学病院の今後は医療安全と高度医療の両立が焦点
2026年の岐阜大学医学部附属病院は、清水雅仁新病院長のもとで、専門医療センターの強化、救急医療の充実、AI・ICTによる医療DXなどを進めている。
PSMA核医学治療の導入や産婦人科医の増員、DMATの災害派遣など、地域医療を支える前向きな動きも確認できる。
その一方で、2026年6月に公表されたモニター・アラーム対応事案は、病院にとって極めて重い課題を突き付けた。
とりわけ、2018年にも同種のアラーム関連事案が発生し、再発防止システムを導入した後に再び運用上の問題が起きたことは、組織全体で向き合うべき問題だ。
今後の評価で重要なのは、先進医療の実績や専門医の人数だけではない。患者の安全を守る仕組みが現場で機能し、再発防止策が実際の診療に定着しているかどうかである。
岐阜大学病院の今後を見極める鍵は、高度医療の発展と、患者が安心して治療を受けられる医療安全体制を両立できるかにある。