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松井健とサナエトークンの関係は?開発責任・高市事務所との説明差、補償の現在地を徹底検証

御厨 美冬 御厨 美冬 • 更新: • 公開: • 読了約 29 分
目次

松井健氏とサナエトークン(SANAE TOKEN)の関係は、単なる開発協力者という範囲にとどまらない。松井氏は株式会社neuの代表であり、暗号資産サナエトークンについて、自身のチームが発案・設計・実装を担当したと明らかにしている。また、発行主体であるNoBorder DAOの代表社員でもあった人物だ。

一方、この問題は高市早苗首相本人と高市事務所が暗号資産の発行を承認していたのか、開発側が主張する事前説明はどこまで行われていたのかという政治的な論点にも発展した。2026年7月には国会で秘書の陳述書が取り上げられ、金融庁による無登録営業の問題や、保有者への補償も議論されている。10月31日現在、補償サイトでの通常の返金手続きは終了しており、トークンの市場価格も発行初日の最高値から大きく下落した状態にある。

【人物関係を整理】松井健とは何者?株式会社neu代表とNoBorder DAOでの役割

松井健サナエトークン

松井健氏を理解するうえで重要なのは、サナエトークンの発行主体と、実際に開発を担当した人物・企業を区別することだ。

2026年4月1日配信の週刊文春の独占取材で、松井氏は実名と顔を出して騒動について説明した。同氏は株式会社neuの代表であり、発行主体の合同会社NoBorder DAOでは代表社員を務めていた。

同記事によれば、松井氏はサナエトークンについて、自身のチームが企画の発案から設計、実装まで担当したと説明している。単にプロジェクトを宣伝した人物ではなく、トークンの開発そのものに関わった責任者だったという位置付けだ。

松井健氏が担った開発責任

週刊文春の取材で松井氏は、サナエトークンの開発について次のように述べている。

「私のチームで発案、設計し、実装したものです」

これは開発への関与を本人が認めた重要な発言である。

さらに松井氏は、騒動が起きた当初から自分の言葉で説明したかったものの、高市氏に悪影響が及ぶことを懸念して発言を控えていたと説明した。その後、事実関係を明らかにするため、弁護士同席のもとで取材に応じた。

ただし、開発責任を担ったことと、政治家本人の承認を得ていたことは別の問題だ。松井氏の説明から確認できるのは、あくまで開発チーム側の役割と、同氏が認識していた事前のコミュニケーションである。

NoBorder DAOと溝口勇児氏の関係

NoBorder DAOは、起業家の溝口勇児氏が手がける政治系YouTube番組「NoBorder」から生まれたコミュニティだ。

公式サイトによると、NoBorderは2025年7月に始動し、同年12月にはNoBorderアプリをリリースした。番組とアプリを組み合わせ、政治や社会課題について参加者が意見を交わす仕組みを構想していた。

この活動から派生したのが、Japan is Backプロジェクトである。AIやWeb3、DAOを活用し、国民の声を集めて民主主義の仕組みをアップデートするという理念を掲げていた。

その構想を具体化するインセンティブとして開発されたのがSANAE TOKENだった。発行主体、企画運営、技術開発をそれぞれ区別すると、松井氏がどの部分を担当していたのかが見えてくる。

関係者の役割を一覧で整理

人物・組織 主な立場・役割 確認できる関係
松井健氏 株式会社neu代表 トークンの発案・設計・実装を担当したと証言
株式会社neu 松井氏が代表を務める企業 NoBorder DAOとのプロジェクト上の関係
NoBorder DAO 発行主体 SANAE TOKENを発行した合同会社
溝口勇児氏 起業家・NoBorder運営者 番組やDAOコミュニティの運営に関与
高市早苗氏 内閣総理大臣 トークンの発行・取引について承認を否定
木下剛志氏 高市氏の公設第一秘書・奈良事務所関係者 2025年12月のオンライン会議や事務所側の説明をめぐる当事者
チームサナエ 高市氏の公認後援会アカウント 2026年2月25日に関連投稿をリポスト

この関係図で特に注意したいのは、NoBorder DAOと高市事務所を同一の組織として扱わないことだ。事前の連絡やオンライン会議、後援会アカウントによる投稿があったことと、首相本人が暗号資産の発行を承認したことは同義ではない。

この区別が、騒動全体を理解するための出発点になる。週刊文春、NoBorder公式サイト、ITmedia NEWSの報道を参照。

【発行経緯と真相】サナエトークンはなぜ作られた?ブロードリスニングとの関係

サナエトークンの発行目的を理解するには、まずNoBorderが掲げていたブロードリスニングという考え方を知る必要がある。

ブロードリスニングとは何か

ブロードリスニングとは、SNSやインターネット上の意見を幅広く収集し、AIなどで分析して社会のニーズや意見の傾向を把握する手法だ。

大阪府が公開しているブロードリスニングの説明でも、基本的な流れは次のように整理されている。

  • 意見の収集:SNSやブログ、レビューサイトなどから多様な声を集める。
  • AIによる分析:意見をテーマ別に分類し、肯定的・否定的な傾向や注目テーマを把握する。
  • 結果の活用:分析結果を政策検討や社会課題の把握に役立てる。

NoBorderが目指していたのも、こうした方法をアプリ上で実現することだった。

ただし、オンラインで意見を集める場合、参加者が特定の政治的立場や関心を持つ人に偏る可能性がある。幅広い層から意見を集めるには、参加する動機を設計する必要がある。

NoBorderの公式サイトは、参加者の貢献量に応じてトークンを付与する仕組みを、その解決策として説明していた。

Solana上で発行されたミームコインという側面

SANAE TOKENは2026年2月25日、Solanaブロックチェーン上で発行された暗号資産だ。ティッカーシンボルはSANAETで、Raydiumという分散型取引所の流動性プールを通じて取引が始まった。

公称の総供給量は10億枚、初期価格は1枚0.1円。公式サイトに掲載されていた配分は次のとおりだ。

  • エコシステム:65%
  • コミュニティ:20%
  • 流動性:10%
  • チーム:5%

運営側は、単なる投機目的のミームコインではなく、社会参加を促すコミュニティトークンとして位置付けていた。

しかし、実際にはSolana上で自由に売買され、価格が短期間で急騰する市場性を持っていた。ここに、アプリ内の参加ポイントという構想と、一般の投資家が購入できる暗号資産との間に大きな認識の隔たりが生まれた。

公式サイトの免責事項だけでは防げなかった誤認

発行元の公式サイトには、高市氏と提携または承認されているものではないという免責事項が掲載されていた。

一方で、プロジェクト名に「SANAE」を使用し、高市氏を想起させるビジュアルや説明を掲載していたこと、さらに高市氏の公認後援会アカウントが関連投稿をリポストしたことが重なった。

免責事項が存在していても、プロジェクト全体の見せ方によっては、一般の利用者が政治家本人の公認事業だと受け取る可能性がある。

今回の問題は、暗号資産の技術的な設計だけではなく、名称、広報、政治的な信用の使われ方が十分に整理されていなかったことにも原因があった。

公式サイトは現在もJapan is Backプロジェクトの中止と取引自粛を告知している。大阪府のブロードリスニング解説、SANAE TOKEN公式サイト、株式会社一創の技術調査を参照。

【時系列で検証】松井健の証言から発行・暴落・補償までの全経緯

サナエトークン問題は、2025年12月のオンライン会議から始まり、2026年2月の発行、3月の首相による関与否定、4月以降の証言と国会審議へと展開した。

その後、補償手続きが実施されたものの、事務所側と開発側の認識の違いは解消されていない。

主要な出来事を時系列で確認

年月日 出来事 確認できる内容
2025年12月17日 オンライン会議 NoBorder側と高市事務所の秘書がアプリ構想などについて意見交換
2026年2月25日 トークン発行 Solana上でSANAE TOKENの取引開始。後援会アカウントも関連投稿をリポスト
3月2日 高市氏が関与否定 本人と事務所は発行・取引を承認していないとXで注意喚起
3月4日 運営側が謝罪 名称変更と保有者への補償方針を表明
3月5日 プロジェクト中止 Japan is Backプロジェクトの中止を発表
4月1日 松井氏の証言 週刊文春の取材で開発責任と高市事務所への事前説明を主張
4月3日 補償基準を公表 1枚当たり0.01331ドル相当を基準とする補償方針
6月10日 補償申請開始 申請サイトを開設し本人確認手続きを開始
6月22日 衆議院予算委員会 オンライン会議や秘書と開発側の接点が国会で追及される
7月22日 秘書の陳述書提出 暗号資産の説明や承認について秘書側が否定
7月30日 補償送金開始 USDCによる段階的な送金が始まる
8月27日 補償進捗の報道 補償原資の約88.7%が送金済みとオンチェーン分析で確認
9月30日 通常の受取手続き終了 補償サイトでの通常の返金手続きが終了
10月31日 現在の状況 プロジェクトは中止済み。市場取引は残るが、補償手続きと法的論点は別途確認が必要

特に重要なのは、2025年12月17日の会議と2026年3月2日の関与否定の間に、どのような情報共有があったのかという点だ。

発行そのものは2月25日に行われたが、その前から関係者間でアプリやインセンティブの構想について接点があったことは、後の国会答弁でも取り上げられている。

衆議院予算委員会会議録、週刊文春、NoBorder公式発表、2026年10月24日更新の技術調査を参照。

【最大の争点】松井健の証言と高市事務所・木下剛志氏の説明はなぜ違う?

この問題で最も注目すべきなのは、松井氏が説明した内容と、高市事務所側が説明した内容の違いだ。

単に両者が会ったかどうかという話ではない。暗号資産としての発行構想が事前に共有されていたのか、それともアプリ内のポイントという説明にとどまっていたのかが核心になっている。

松井健氏の主張:暗号資産であることを伝えていた

2026年4月1日、週刊文春は松井氏の実名証言を公開した。

松井氏は、高市事務所の秘書に対し、サナエトークンが暗号資産であることをすべて伝えていたと主張した。

加えて、同誌は株式会社neuの幹部と高市事務所の関係者とのやり取りを記録したとする音声データを公開したと報じている。

松井氏側の説明では、開発構想や暗号資産の性質について事前のコミュニケーションがあったということになる。

これは、首相側の「事務所は知らされていなかった」という説明と正面からぶつかる部分だ。

木下剛志氏側の説明:アプリ内ポイントという認識だった

高市氏の公設第一秘書である木下剛志氏側は、2026年7月22日に提出された陳述書で別の説明を行った。

2025年12月17日のオンライン会議では、NoBorderアプリの構想や参加者へのポイント付与について紹介を受けた記憶はあるものの、暗号資産という言葉を聞いた記憶はないという内容だ。

また、松井氏が会議に出席していたかについても、はっきりとした記憶がないと説明した。

加えて、2月25日に後援会関係のアカウントがリポストした時点でも、サナエトークンをアプリ内のインセンティブポイントと認識しており、暗号資産としての説明は受けていなかったとした。

4月3日付の回答書が生んだ新たな論点

もう一つ重要なのが、木下氏が作成した2026年4月3日付の週刊現代への回答書だ。

同回答書には、2025年12月17日の会議で、参加者へのインセンティブとして暗号資産を配布するアイデアについて説明があったのではないかと思う、という趣旨の記述があった。

この記述は、6月22日の衆議院予算委員会でも取り上げられた。

高市氏は7月27日の同委員会で、回答書が秘書本人によって作成されたことを認めたうえで、企業側がそう説明しているのであればそうなのかもしれないという趣旨だったと説明した。

つまり、回答書に暗号資産という言葉があったからといって、秘書がその技術的な意味や具体的な発行計画まで理解していたとは限らない、というのが首相側の説明だ。

高市早苗首相は一貫して承認を否定

高市氏は2026年3月2日のX投稿で、自身も事務所もサナエトークンについて知らされておらず、承認もしていないと表明した。

4月7日の参議院予算委員会でも、発行主体側から暗号資産の発行・取引について説明を受けておらず、承認していないと改めて答弁している。

さらに6月22日の衆議院予算委員会では、3月2日までサナエトークンという言葉を聞いたことがなかったと説明した。

7月27日には、後援会関係者によるリポスト自体は認めたものの、当時はアプリ内のポイントという認識だったと述べている。

ここで押さえるべきなのは、後援会アカウントによるリポストが存在したことと、高市氏本人がトークンを公認したことは別だという点だ。

また、秘書と開発側の接点があったという事実だけで、首相本人が暗号資産の発行を承認していたと断定することもできない。

現時点で整理できるのは、次の3点である。

  • 松井氏は、暗号資産としての説明を事務所側に行ったと主張している。
  • 木下氏側は、アプリ内ポイントの構想は認識していたが、暗号資産としての説明は受けていないと主張している。
  • 高市氏は、自身も事務所も暗号資産の発行・取引を承認していないと国会で繰り返し説明している。

2026年10月24日時点の公開情報では、NoBorder側が設置を表明した検証委員会の委員構成や最終報告書の公表は確認されていない。両者の説明の食い違いを最終的に解消するには、会議記録、音声、書面、関係者の証言を突き合わせた検証が必要になる。

週刊文春、2026年7月22日付秘書陳述書を報じた産経新聞、衆議院予算委員会2026年6月22日・7月27日の会議録を参照。

【暴落の理由と2026年10月最新】サナエトークンの価格・補償・金融庁問題

サナエトークンの価格が急落した直接的なきっかけは、高市氏本人による関与否定だった。

しかし、価格下落の背景には、それ以前からの政治的な信用への依存、流動性の問題、そして発行プロジェクトの中止が重なっている。

発行初日に約38倍まで急騰、その後に急落

2026年2月25日の発行初日、サナエトークンは市場で急激な値上がりを記録した。

株式会社一創が2026年10月24日に更新した調査記事によると、発行初日の日足始値は約0.000726ドル、高値は約0.02780ドルだった。始値から高値まで約38倍に上昇した計算になる。

しかし、3月2日21時6分(日本時間)、高市氏がXで関与を否定すると、相場は大きく動いた。

3月2日の日足では、高値0.01802ドルに対して安値は0.00584ドル。高値から安値まで約68%の値動きとなった。

3月5日にプロジェクトの中止が発表されると、同日の日足終値は0.00413ドルまで下落。3月1日の終値0.01189ドルと比較して約65%低い水準になった。

これは、政治家本人との関係があるように見えることによって生まれた期待が、本人の否定によって急速に失われたことを示す動きだ。

2026年10月23日時点の価格と市場の状態

確認項目 数値・状況
発行日 2026年2月25日
公称初期価格 0.1円
発行初日の最高値 約0.02780ドル・約4.36円
3月5日終値 約0.00413ドル
6月6日終値 約0.001645ドル
10月23日終値 約0.002040ドル・約0.32円
最高値からの下落率 約93%
10月の月間出来高 23日までで約275ドル

この数値から分かるのは、価格が下がっただけでなく、取引そのものが極めて少なくなっていることだ。

2026年10月23日の終値は約0.32円相当。最高値の約4.36円から約93%下落している。

加えて、10月23日までの月間出来高は約275ドルにとどまった。取引が数日に1回程度しか成立しない状況では、画面上の価格が必ずしも現在の売却可能価格を示すとは限らない。

発行元のプロジェクト中止後もRaydium上に流動性プールは残っているが、公式サイトは取引を控えるよう呼びかけている。

サナエトークンの補償・返金状況

運営側は2026年3月4日に保有者への補償方針を表明した。その後、4月3日に補償単価を1枚当たり0.01331ドル相当とする基準が示された。

補償はUSDCという米ドル連動型のステーブルコインで実施された。

主な流れは以下のとおりだ。

  • 4月3日:補償基準を公表。
  • 6月10日:補償申請サイトを開設し、本人確認を開始。
  • 7月30日:USDCによる段階的な送金を開始。
  • 8月27日:補償原資の約88.7%が送金済みと報道。
  • 9月30日:通常の補償サイトでの返金手続きを終了。

NADA NEWSがSolanaのオンチェーンデータを分析した2026年8月27日の報道では、補償原資の総額は193,403.90USDCだった。

そのうち約171,600USDC、割合にして約88.7%が送金済みと確認された。

ただし、この数字は送金金額の割合であり、対象者の88.7%が受け取ったという意味ではない。実際の受取人数や未受取者数について、詳細な件数ベースの内訳は公表されていない。

また、2026年9月30日をもって補償サイトでの通常の受取手続きは終了した。未受領の人については、補償サイトに記載されたメール窓口への個別連絡が案内されている。

補償の対象は指定されたスナップショット時点の保有記録に基づいており、後から購入したトークンが当然に補償されるわけではない。

加えて、補償規程には受領によって補償に関連する一定の法的請求権を最終解決とする条項が設けられている。補償を受け取った人は、金額だけでなく、こうした規程の内容も理解しておく必要がある。

金融庁の無登録問題はどうなった?

サナエトークン問題には、暗号資産交換業の登録をめぐる法律上の論点もある。

2026年6月10日の衆議院財務金融委員会では、金融庁がサナエトークンについて個別事案の具体的な対応状況を明らかにすることは差し控えた。

一方、一般論として、無登録で暗号資産交換業を行う場合には、利用者保護の観点から実態を把握し、必要に応じて業務停止や警告、告発などを行うと説明している。

同日の答弁では、金融庁の相談窓口にサナエトークンのDEX購入などに関する損失の相談が5件寄せられ、うち3件は相談者側から被害額の主張があったとされた。

さらに7月14日の参議院財政金融委員会では、7月8日までに損失に言及した相談が7件に増えたと報告された。この数字には補償申請手続きに関する相談も含まれている。

片山さつき金融担当大臣は、暗号資産の販売・交換・媒介を業として行う場合には、資金決済法上の暗号資産交換業登録が必要になると説明した。また、個別案件については形式だけではなく、実態に即して判断する必要があると述べている。

したがって、無登録業者による違法な暗号資産交換業に該当するかどうかは、単に発行主体が登録していなかったという事実だけで確定するものではない。実際にどのような販売・勧誘・媒介行為が行われたのかが重要になる。

なお、2026年7月15日には暗号資産の規制を金融商品取引法へ移管する改正法が成立した。投資家保護や無登録営業への対応を強化する制度改正だが、サナエトークンの発行・取引が行われた2〜3月の行為に対して、新しい罰則をそのまま遡及適用するという意味ではない。

衆議院財務金融委員会、参議院財政金融委員会、金融庁の国会提出法案資料、NADA NEWS、株式会社一創の調査を参照。

【プロの結論】サナエトークン問題から見える政治・暗号資産・情報発信のリスク

サナエトークン問題を単なる仮想通貨の暴落事件として理解すると、重要な論点を見落とす。

この問題には、少なくとも3つの構造的な課題がある。

1. 政治家の名前と暗号資産の信用は切り離せるのか

暗号資産は、発行者やプロジェクトの将来性、コミュニティの期待などによって価格が動く。

今回のように現職政治家の名前が使用されると、政策への支持や後援会の活動、本人の公認といった要素が市場の期待に影響を与える可能性がある。

しかし、名前を使うことと本人の承認を得ることは全く異なる。免責事項があっても、広告やビジュアル、SNS上の拡散によって誤認が生じる可能性は残る。

政治的な信用を暗号資産の価値形成に結び付ける場合、発行者には通常以上に明確な説明責任が求められる。

2. アプリ内ポイントと市場で売買される暗号資産は別物

今回の説明の食い違いの中心にあるのが、ポイントと暗号資産の違いだ。

アプリ内要点は、通常、特定のサービス内で利用するための仕組みである。一方、ブロックチェーン上の暗号資産は、外部のウォレットに移転したり、分散型取引所で売買されたりする可能性がある。

利用者にとっては、両者の違いは非常に大きい。

どのような仕組みで発行され、誰が保有し、誰が売却でき、価格が下がった場合にどのような責任があるのか。こうした説明が不足したままプロジェクトを進めれば、参加者間で認識のずれが生まれる。

3. 補償の実施と法的責任の判断は別問題

サナエトークンでは、発行元が補償を実施したことは一つの重要な事実だ。

しかし、補償が進んだからといって、発行時の説明責任や金融関連法令への適合性が自動的に解決するわけではない。

被害への対応と、発行・販売行為が適法だったかという問題は分けて考える必要がある。

また、補償規程に同意して受け取った場合には、請求権の処理に影響する条項もあるため、利用者にとっては単純な返金以上の意味を持つ。

暗号資産プロジェクトを見極める5つの判断基準

同様のトラブルを避けるためには、次の項目を確認したい。

  • 発行主体:実際に誰が発行し、どの法人が運営責任を負っているのか。
  • 公認・提携の証拠:政治家や著名人の名前が使われていても、本人の公式な承認があるか。
  • トークンの用途:アプリ内ポイントなのか、外部送金や市場売買ができる暗号資産なのか。
  • 流動性と価格形成:取引量が十分か、少数の売買で価格が大きく動かないか。
  • 法令と補償規程:必要な登録の有無、補償条件、申請期限、権利放棄条項を確認できるか。

特に、政治家や有名人の名前が付いているから安全だと判断するのは危険だ。公式発信、発行主体の説明、金融庁の登録情報、ブロックチェーン上の実際の取引状況をそれぞれ確認することが重要になる。

今回のケースは、技術的にトークンを発行できることと、社会的な信用を伴う金融サービスを提供できることが全く別であると示した事例だ。

【松井健・サナエトークン】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:サナエトークンを開発したのは松井健氏ですか?
A1:松井健氏本人が週刊文春の取材で、自身のチームが発案・設計・実装したと説明している。松井氏は株式会社neuの代表で、NoBorder DAOの代表社員でもあった。

Q2:松井健氏と高市早苗首相は直接関係していたのですか?
A2:松井氏は高市事務所の秘書に暗号資産であることを説明していたと主張している。一方、高市氏は本人も事務所も発行・取引を承認していないと説明している。秘書とNoBorder側のオンライン会議などの接点は国会でも取り上げられたが、首相本人の承認があったことを示す確定的な結論は公表されていない。

Q3:木下剛志氏はサナエトークンの存在を知っていたのですか?
A3:木下氏側は2025年12月の会議でアプリ内ポイントの構想は認識していたと説明している。ただし、暗号資産としての発行や取引について説明を受けたことはないとしている。松井氏側の証言とは認識が食い違っている。

Q4:サナエトークンは現在も売買できますか?
A4:2026年10月時点でもSolana上のRaydiumに取引プールは残っている。ただし、発行元はプロジェクトの中止を公表し、取引を控えるよう呼びかけている。流動性が低く、表示価格で売却できる保証もない。

Q5:サナエトークンの返金・補償はまだ受けられますか?
A5:通常の補償サイトでの受取手続きは2026年9月30日に終了した。未受領の人については、補償サイトに記載されたメール窓口への個別連絡が案内されている。対象条件や個別の対応状況については、発行元の案内を確認する必要がある。

Q6:サナエトークンは金融庁から違法と判断されたのですか?
A6:2026年10月31日時点で、無登録の暗号資産交換業に該当するかどうかについて、公的な最終判断は確認できない。金融庁は国会で個別事案への具体的な対応状況の回答を控えつつ、一般論として実態に即して判断すると説明している。

まとめ:松井健とサナエトークン問題の現在地、今後の注目点

松井健氏は、サナエトークンの発案・設計・実装を担当したと本人が証言している株式会社neu代表であり、NoBorder DAOの代表社員でもあった。発行主体と開発責任者の関係は、公開情報から整理できる。

一方、高市事務所との事前説明をめぐっては、松井氏の「暗号資産であることをすべて伝えた」という主張と、木下剛志氏側の「アプリ内ポイントという認識だった」という説明が対立している。高市氏自身は、発行・取引の承認を一貫して否定している。

経済面では、2026年2月25日の発行初日に急騰した価格が、3月2日の関与否定と3月5日のプロジェクト中止を経て大幅に下落した。補償はUSDCによって進められ、8月27日時点で補償原資の約88.7%が送金済みと確認されたが、9月30日に通常の受取手続きは終了している。

今後の焦点は、発行前の説明内容を裏付ける資料の公開、NoBorder側の検証結果、金融庁による法令上の判断、そして未受領者への個別対応だ。

【プロの結論】今回の問題で最も重要なのは、誰がトークンを作ったかだけではなく、誰が何を知り、どのような説明を受け、どこまで承認していたのかを切り分けることにある。開発責任、政治的な関与、金融規制上の責任、利用者への補償は、それぞれ異なる論点だ。

松井氏の証言と高市事務所側の説明のどちらが正確なのか、最終的な検証には客観的な資料と公的な調査結果が欠かせない。2026年10月31日現在、サナエトークンはプロジェクトとして中止されているが、政治と暗号資産の関係を考えるうえで、なお検証すべき課題を残している。

主な参照資料:週刊文春(2026年4月1日配信)、ITmedia NEWS、衆議院予算委員会会議録(2026年6月22日・7月27日)、衆議院財務金融委員会会議録(2026年6月10日)、金融庁の国会答弁、NoBorder公式サイト、NADA NEWS(2026年8月27日)、株式会社一創の2026年10月24日更新資料。

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御厨 美冬

スポーツ担当として7年以上の取材経験。sports領域の公式発表・配信元の告知を一次情報として確認し、確認できない情報は記事に含めない方針です。

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