菌血症とは、本来は細菌が存在しない血液中に細菌が入り込んだ状態です。発熱や悪寒、震えるほどの寒気などをきっかけに発見されることがありますが、自覚症状がほとんどないケースもあります。原因は尿路感染症や肺炎、カテーテル関連感染症、感染性心内膜炎などさまざまで、感染の程度や患者の状態によって重症度も異なります。
特に注意したいのが、菌血症と敗血症の違いです。菌血症が確認されたからといって必ず敗血症になるわけではありませんが、感染に伴う臓器障害が進行すると命に関わる状態に陥る可能性があります。2026年は厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版」も公表されており、血液培養の解釈や抗菌薬の適正使用について理解しておくことが大切です。
この記事では、菌血症の症状・原因・診断基準・血液培養の見方から、治療方法、抗菌薬、予後、培養陽性時のコンタミネーションの判断まで、2026年11月時点の診療情報をもとに整理します。
【菌血症とは】血液中に細菌が侵入した状態と、その危険性

菌血症(Bacteremia)は、血液中に細菌が存在する状態を指す医学用語です。
通常、健康な人の血液は無菌状態に保たれています。しかし、身体のどこかで発生した細菌感染や、医療処置などをきっかけに細菌が血流へ侵入すると、菌血症が生じることがあります。
重要なのは、菌血症という言葉そのものが、必ずしも重症度を表しているわけではない点です。
菌血症には一過性と持続性がある
菌血症は、経過によって大きく異なる特徴を示します。
一過性菌血症
細菌が一時的に血液中へ侵入する状態です。
例えば、歯科治療や抜歯など、出血を伴う処置の後に一時的な菌血症が発生することがあります。多くの場合、免疫機能によって細菌が処理され、重大な続発症を起こさずに経過します。
持続性・反復性菌血症
血液中から繰り返し細菌が検出される状態です。
感染性心内膜炎、血管内カテーテル感染、膿瘍など、体内に細菌の供給源が残っている可能性があります。
特に感染源が除去されない場合、細菌が血流を介して別の臓器へ広がり、膿瘍や骨髄炎などの転移性感染症を引き起こすことがあります。
MSDマニュアルの菌血症に関する医学的解説でも、一過性の菌血症から、全身に影響を及ぼす持続性の感染まで幅広い経過が示されています。
菌血症は必ずしも症状が出るとは限らない
菌血症という診断を聞くと、必ず高熱や強い悪寒が出ると思う人もいる可能性があります。
しかし、実際には無症状の場合や、軽い発熱だけで経過する場合もあります。
一方で、高齢者や免疫機能が低下している人では、典型的な発熱が目立たず、低体温や意識状態の変化などが先に現れることもあります。
つまり、熱がないから菌血症ではない、という判断はできません。
菌血症を放置すると何が起こる?
菌血症そのものが直ちに重篤な結果を招くとは限りません。しかし、感染が持続したり、身体の免疫反応が過剰かつ調節不能になったりすると、敗血症に進展する可能性があります。
加えて、血流に乗った細菌が心臓の弁や骨、関節、脳などに到達すると、別の感染症を引き起こすこともあります。
そのため、血液培養で細菌が確認された場合には、単に陽性という結果を見るだけでなく、感染源と全身状態を総合的に評価する必要があります。
【菌血症の症状と原因】発熱・悪寒から尿路感染症・肺炎まで
菌血症の症状は、原因となる感染症や細菌の種類、患者の免疫状態によって異なります。
特に注意したいのが、発熱と悪寒戦慄です。
菌血症で現れる主な症状
代表的な症状を整理すると、次のようになります。
- 発熱:38℃以上の発熱が見られることがある。
- 悪寒・戦慄:強い寒気や、身体が震えるほどの悪寒が現れる。
- 頻呼吸:呼吸数が増加し、息苦しさを感じる場合がある。
- 頻脈:心拍数が増加する。
- 血圧低下:循環状態が悪化し、血圧が下がることがある。
- 意識障害:ぼんやりする、反応が鈍くなる、混乱するなどの変化が現れる。
- 消化器症状:腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などが見られることがある。
日本版敗血症診療ガイドライン2024では、発熱や悪寒戦慄に加えて、原因不明の低体温、低血圧、頻呼吸、意識障害なども菌血症を疑う重要な所見として挙げられています。
発熱と悪寒戦慄は重要なサイン
菌血症を疑ううえで、特に注目されるのが悪寒戦慄を伴う発熱です。
単に寒気を感じるだけでなく、歯がガチガチと鳴るほど身体が震える場合は、血流への細菌侵入を疑う重要な手がかりになります。
もちろん、悪寒戦慄があれば必ず菌血症というわけではありません。しかし、日本版敗血症診療ガイドライン2024でも、悪寒戦慄を伴う発熱は菌血症の可能性を高める所見として扱われています。
菌血症の主な原因となる感染症
菌血症は独立した感染源があるというより、身体の別の場所で起きた感染が血流に波及することで発生するケースが多くあります。
代表的な原因は次のとおりです。
1.尿路感染症
尿路感染症は、菌血症の原因となる代表的な感染症の一つです。
膀胱炎から腎盂腎炎へ感染が広がり、さらに細菌が血流に侵入する場合があります。
原因菌としては大腸菌がよく知られています。尿道カテーテルの留置や尿路の閉塞、排尿障害などが感染リスクに関係することもあります。
特に高齢者や基礎疾患を持つ人では、尿路感染症から全身状態が悪化する可能性があるため注意が必要です。
2.肺炎
肺炎によって肺の組織に細菌感染が起こり、細菌が血流へ侵入すると菌血症を発症することがあります。
原因菌には肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などが含まれます。
咳、痰、発熱、呼吸困難などの呼吸器症状に加えて、低酸素状態や血圧低下などが見られる場合は、重症感染症の可能性があります。
3.カテーテル関連血流感染症
中心静脈カテーテルや末梢静脈カテーテルなどの医療器具を介して細菌が侵入することがあります。
カテーテルの刺入部に発赤や腫れが現れる場合もありますが、外見上の異常が目立たない感染もあります。
4.感染性心内膜炎
心臓の内膜や弁に細菌が感染する病気です。
血液中に細菌が持続的に存在する原因となり、心不全や塞栓症などの重い合併症につながることがあります。
5.その他の感染症
以下も菌血症の原因となります。
- 腹腔内感染症
- 胆道感染症
- 皮膚・軟部組織感染症
- 褥瘡感染症
- 膿瘍
- 骨髄炎
- 手術部位感染症
日本版敗血症診療ガイドライン2024でも、肺炎、尿路感染症、腹腔内感染症、カテーテル関連血流感染症などが菌血症の感染源として挙げられています。
【菌血症と敗血症の違い】診断基準・重症度を正しく理解する
菌血症と敗血症は、医療現場で関連して使われる言葉ですが、医学的には異なる概念です。
両者を混同すると、検査結果や病状の意味を誤解する原因になります。
菌血症と敗血症の違いを比較
| 比較項目 | 菌血症 | 敗血症 |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | 血液中に細菌が存在する状態 | 感染症に対する調節不能な生体反応によって重篤な臓器障害が生じた状態 |
| 主な判断材料 | 血液培養など | 感染症の存在・疑いと臓器障害 |
| 血液培養 | 陽性になることがある | 陽性とは限らない |
| 症状 | 無症状から発熱・悪寒まで幅広い | 呼吸・循環・腎臓・意識などに障害が現れることがある |
| 重症度 | 菌血症という言葉だけでは判断できない | 重篤な臓器障害を伴う |
| 関係性 | 敗血症を伴わない場合もある | 菌血症を伴う場合も、伴わない場合もある |
この違いを理解するうえで重要なのが、2016年に国際的に示されたSepsis-3の考え方です。
日本版敗血症診療ガイドライン2024も、この定義に準拠しています。
敗血症は血液培養が陰性でも起こる
ここは特に誤解されやすいポイントです。
敗血症と診断するために、必ずしも血液培養が陽性である必要はありません。
感染症が存在していても、細菌が血液から検出されないことがあります。採血のタイミングや抗菌薬の投与、菌血症が一時的であることなどが関係します。
日本版敗血症診療ガイドライン2024では、敗血症患者のうち菌血症を合併する割合は38〜69%とする報告が紹介されています。
つまり、敗血症のすべてが血液培養陽性になるわけではないのです。
2026年時点の敗血症の診断基準
日本版敗血症診療ガイドライン2024では、敗血症について次の診断基準が示されています。
- 感染症が存在する、または感染症が疑われる。
- SOFAスコアが急性に2点以上上昇している。
SOFAスコアは、呼吸、血液凝固、肝機能、循環、中枢神経、腎機能という6つの項目から臓器障害の程度を評価する指標です。
加えて、敗血症性ショックは、敗血症の診断基準に加えて、輸液を行っても平均動脈圧65mmHg以上を維持するために血管収縮薬が必要であり、血中乳酸値が2mmol/Lを超える状態と定義されています。
なお、SOFAスコアは医療者が臨床データを用いて評価するものであり、患者自身が症状だけで敗血症を判定するためのものではありません。
菌血症は細菌の存在を示す概念、敗血症は感染による臓器障害を示す概念。この違いが最も重要です。
【菌血症の診断と血液培養】陽性結果とコンタミネーションの見分け方
菌血症の診断で中心的な役割を担うのが、血液培養検査です。
血液培養は、採取した血液を専用の培養ボトルに入れ、細菌などの微生物が増殖するかどうかを調べる検査です。
原因菌を特定できれば、適切な抗菌薬を選択するための重要な情報になります。
血液培養はなぜ2セット以上採取する?
日本版敗血症診療ガイドライン2024では、血液培養について、抗菌薬を投与する前に2セット以上採取することが推奨されています。
複数セットを採取する理由は主に2つあります。
- 血液中に存在する細菌を検出できる可能性を高めるため。
- 真の菌血症と採血時のコンタミネーションを区別しやすくするため。
成人では、一般的に1セットにつき好気性ボトルと嫌気性ボトルを使用します。1セット当たりの採血量は20〜30mL程度が目安とされ、日本で一般的なボトルでは20mLとすることが多いとガイドラインに記載されています。
同ガイドラインが引用する研究では、血液培養の検出率は1セットで約73%、2セットで約90%、3セットで約98%と報告されています。
ただし、これらは研究に基づく数値であり、すべての患者に同じ検出率が保証されるわけではありません。
血液培養陽性なら必ず菌血症なのか?
血液培養陽性とは、培養ボトル内で微生物の増殖が確認された状態です。
しかし、陽性という結果だけで、必ずしもその細菌が患者の感染症の原因であるとは判断できません。
採血時に皮膚に存在する常在菌が混入することがあり、これをコンタミネーション(Contamination)、すなわち検体の汚染と呼びます。
特に皮膚に常在する細菌が1セットだけから検出された場合には、汚染の可能性を考慮します。
コンタミネーションが疑われる代表的な細菌
2026年1月16日に公表された厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版」医科・入院編では、血液培養から検出された細菌について、真の原因菌とコンタミネーションを区別する考え方が整理されています。
代表的な菌種のデータは次のとおりです。
| 検出された菌 | 真の原因菌 | コンタミネーション | 判断のポイント |
|---|---|---|---|
| 大腸菌 | 97% | 1% | 真の感染原因である可能性が高い |
| 黄色ブドウ球菌 | 93% | 1% | 1セットのみでも慎重な対応が必要 |
| コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS) | 10% | 82% | 1セットのみの陽性では汚染を疑う |
| コリネバクテリウム属菌 | 8% | 88% | 臨床所見と複数セットの結果を確認 |
| ストレプトコッカス属菌 | 30% | 55% | 菌種や感染状況による総合判断が必要 |
出典:厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版」医科・入院編の掲載データ。各割合は参照されたデータに基づくもので、個々の患者の診断確率を示すものではありません。
特に重要なのは、次の2つの違いです。
コンタミネーションが疑われるケース
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)やコリネバクテリウム属菌などが、複数セットのうち1セットだけから検出された場合です。
例えば、2セット中1セットのみから表皮ブドウ球菌が検出された場合、採血時の汚染が疑われます。
真の菌血症を疑うケース
大腸菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、A群β溶血性連鎖球菌、カンジダなどが検出された場合です。
これらは、1セットだけの陽性でも真の原因菌として扱う必要があります。
また、通常は汚染菌と考えられやすい細菌でも、複数セットから同じ菌が検出された場合には、実際の血流感染症である可能性を考慮します。
厚生労働省の第四版では、判定に迷う場合は血液培養を再検することも示されています。
血液培養の結果を判断するときの4つのポイント
血液培養の陽性・陰性を正しく理解するには、以下の情報が欠かせません。
1. 菌種: 検出された細菌が、一般的な病原菌なのか皮膚常在菌なのか。
2. 陽性セット数: 何セット中、何セットで同じ菌が検出されたのか。
3. 陽性になるまでの時間: 培養開始からどの程度で細菌が検出されたのか。
4. 患者の状態: 発熱、悪寒、血圧低下、カテーテル留置、免疫不全などがあるか。
陽性になるまでの時間も判断材料になりますが、それだけで汚染か真の感染かを確定することはできません。
また、血液培養が1セットしか採取されていない場合には、コンタミネーションかどうかの判断が難しくなります。
血液培養陽性という結果だけを見て、感染症の有無や治療の必要性を自己判断しないことが大切です。
【菌血症の治療と抗菌薬】原因菌に応じた治療と感染源のコントロール
菌血症の治療では、血液中の細菌を抑えるだけでなく、細菌が侵入した原因を取り除くことが重要です。
治療内容は、原因菌、感染部位、薬剤感受性、患者の全身状態などによって決まります。
菌血症の基本的な治療方法
主な治療は次の3つです。
1.抗菌薬による治療
菌血症が疑われ、重症感染症の可能性がある場合には、必要な培養検体を採取したうえで抗菌薬による治療を開始します。
原因菌が判明する前は、感染源や患者の重症度、薬剤耐性菌のリスクなどを考慮して初期治療を選択します。
その後、血液培養と薬剤感受性試験の結果に基づき、より適切な抗菌薬へ変更します。
2.感染源のコントロール
抗菌薬だけでは感染が十分に改善しない場合があります。
そのため、感染源そのものへの対応も必要です。
具体的には次のような処置があります。
- 膿瘍がある場合は排膿する。
- 感染したカテーテルなどの医療器具を必要に応じて抜去する。
- 尿路閉塞などがある場合は原因に対処する。
- 感染性心内膜炎などが疑われる場合は専門的な評価を行う。
3.全身状態の管理
重症例では、抗菌薬治療と並行して、輸液、酸素投与、循環管理、臓器機能のサポートなどを行います。
敗血症性ショックに進行した場合には、集中治療室での管理が必要になることもあります。
MSDマニュアルでも、菌血症の治療では抗菌薬に加え、膿瘍の排膿や感染源となる医療器具の抜去などが重要とされています。
菌血症に使われる抗菌薬は?
抗菌薬は、原因菌や感染部位によって使い分けます。
例えば、細菌の種類や薬剤感受性に応じて、β-ラクタム系抗菌薬、セフェム系抗菌薬、カルバペネム系抗菌薬、グリコペプチド系抗菌薬などが治療の選択肢になります。
ただし、すべての菌血症に同じ薬剤が使われるわけではありません。
大腸菌による尿路感染症と、黄色ブドウ球菌による血流感染症では、必要な治療内容が異なります。
また、薬剤耐性菌が原因の場合には、通常の抗菌薬が効きにくい可能性もあります。
そのため、培養結果と薬剤感受性試験を確認し、原因菌に適した薬剤へ調整することが基本です。
抗菌薬の投与期間は何日?
菌血症の治療期間に一律の決まりはありません。
感染源が明確で、感染源のコントロールができており、臨床的に安定した一部の単純性グラム陰性菌菌血症では、比較的短期間の治療が検討されることがあります。
一方、次のようなケースでは、より長期の治療が必要になる可能性があります。
- 感染性心内膜炎を合併している。
- 骨髄炎など深部感染症がある。
- 黄色ブドウ球菌による菌血症がある。
- 血液培養陽性が持続している。
- 感染源を十分に除去できていない。
- 免疫機能が低下している。
厚生労働省の2026年版第四版では、治療開始後の効果判定と抗菌薬の適正化についても整理されています。入院患者の経験的治療では、72時間後を目安に培養結果や臨床経過を評価し、必要に応じて抗菌薬の狭域化や中止を検討します。
なお、抗菌薬を自己判断で中断したり、以前処方された薬を再利用したりすることは避けてください。
【菌血症の予後と注意点】回復を左右する要因と緊急受診のサイン
菌血症の予後は、原因となった感染症や細菌の種類、患者の年齢、基礎疾患、治療開始までの時間などによって異なります。
一過性で自然に改善する場合もあれば、敗血症や感染性心内膜炎などを合併して重篤化する場合もあります。
菌血症の予後を左右する主な要因
特に重要なのは次の5つです。
1.原因菌の種類
細菌の種類によって、感染の進行速度や薬剤感受性が異なります。
黄色ブドウ球菌などによる菌血症では、感染性心内膜炎や転移性感染症の評価が重要になります。
2.感染源が特定できているか
尿路感染症や肺炎など、原因となった感染症が特定できれば、適切な治療につなげやすくなります。
逆に、感染源が不明な場合や、膿瘍などの感染源が残っている場合は、治療が難しくなることがあります。
3.治療開始までの時間
重症感染症では、適切な抗菌薬治療を早期に開始が必要です。
特に敗血症性ショックが疑われる場合には、迅速な対応が大切です。
4.臓器障害の有無
呼吸不全、急性腎障害、意識障害、循環不全などが生じている場合は、より重篤な状態と考えられます。
5.年齢や基礎疾患
高齢者、糖尿病患者、悪性腫瘍の治療中の人、免疫抑制状態にある人などでは、感染症が重症化するリスクを慎重に評価する必要があります。
菌血症は完治するのか?
菌血症は、原因菌に適した抗菌薬治療を行い、感染源を適切にコントロールできれば、回復が期待できる病態です。
ただし、血液培養が陰性になったことだけで、すべての感染が治ったと判断できるわけではありません。
感染性心内膜炎や骨髄炎など、深部に感染が残っている場合には、追加検査や長期的な治療が必要になることがあります。
黄色ブドウ球菌菌血症やカンジダ血症などでは、治療効果を確認するための血液培養再検が重要になる場合もあります。
こんな症状がある場合は緊急対応が必要
菌血症や敗血症が疑われるとき、特に次の症状が現れた場合には注意してください。
- 強い悪寒戦慄を伴う発熱
- 息苦しさや呼吸の異常
- 意識がもうろうとする、受け答えがおかしい
- 急激な血圧低下や冷たい汗
- 尿量が明らかに減少する
- 急速に全身状態が悪化する
こうした症状は重症感染症や臓器障害の可能性を示します。
日本国内で意識障害や呼吸困難、急激な全身状態の悪化などが見られる場合には、救急車の要請を含めて速やかに対応してください。
発熱が続いている場合も、自己判断で様子を見続けず、医療機関で原因を調べることが大切です。
【菌血症に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:菌血症と診断されたら必ず敗血症になりますか?
A1:必ず敗血症になるわけではありません。菌血症は血液中に細菌が存在する状態であり、敗血症は感染に伴う重篤な臓器障害が生じた状態です。一過性の菌血症で重大な合併症を起こさずに経過する場合もあります。ただし、全身状態が悪化する場合は迅速な治療が必要です。
Q2:血液培養が1本だけ陽性でも菌血症なのでしょうか?
A2:菌種と患者の状態によって異なります。大腸菌や黄色ブドウ球菌などは、1セットだけの陽性でも真の感染を疑う必要があります。一方、表皮ブドウ球菌などの皮膚常在菌では、採血時のコンタミネーションが疑われることがあります。複数セットの結果や症状を含めて医師が判断します。
Q3:菌血症は何日くらいで治りますか?
A3:治療期間は原因菌や感染源、合併症の有無によって異なります。比較的単純な菌血症では短期間の治療が検討される場合がありますが、感染性心内膜炎や骨髄炎などを伴う場合は長期治療が必要になることがあります。一律に何日で治るとは決められません。
Q4:菌血症は無症状でも起こりますか?
A4:起こります。一過性の菌血症では自覚症状がない場合もあります。また、高齢者や免疫機能が低下している人では、典型的な発熱が見られないこともあります。
Q5:血液培養が陰性なら菌血症や敗血症ではないのでしょうか?
A5:必ずしもそうではありません。抗菌薬投与後の採血や、細菌が一時的にしか血液中に存在しない場合などには、血液培養が陰性になることがあります。また、敗血症は血液培養陽性を必須条件としていません。臨床症状や血液検査、感染源などを総合的に評価します。
まとめ:菌血症は原因菌の特定と早期治療が重要
菌血症は、血液中に細菌が存在する状態であり、その経過は一過性の軽いものから、敗血症や重篤な合併症につながるものまで幅広くあります。
特に押さえておきたい要点は次のとおりです。
- 菌血症の主な症状は発熱、悪寒戦慄、頻呼吸、血圧低下など。
- 原因には尿路感染症、肺炎、カテーテル関連感染症、感染性心内膜炎などがある。
- 菌血症と敗血症は異なる概念であり、血液培養陰性でも敗血症は起こり得る。
- 血液培養は原則として抗菌薬投与前に2セット以上採取する。
- 血液培養陽性でも、コンタミネーションの可能性を考慮する必要がある。
- 治療では適切な抗菌薬の選択と感染源のコントロールが重要。
2026年の診療情報を確認するうえでは、日本集中治療医学会・日本救急医学会の「日本版敗血症診療ガイドライン2024」と、厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版」が重要な資料となります。
菌血症の診療で本当に大切なのは、単に血液培養が陽性か陰性かだけで判断しないことです。どの細菌が検出されたのか、感染源はどこなのか、臓器障害が起きていないか。 この3点を総合的に評価することが、適切な治療と予後の改善につながります。